温泉街の異形 別府グローバルタワー

2台並んで町を見下ろす 大平山ロープウェイの老後


2015年(平成27年)2月、半世紀以上の歴史を誇った大平山ロープウェイが廃止となった。
しかし、廃止後もこのロープウェイは現役時代と同じ姿で、展望台として第二の人生を歩み始めたのだ。営業中は並ぶことのなかった2台の搬器が、隣り合って共に防府の町を見守る。その姿はさながら長年連れ添った老夫婦のようだ。



大平山ロープウェイは1959年(昭和34年)3月21日に、大平山の中腹から山頂までを結ぶ長さ953m、高低差400mのロープウェイとして開業した(総工費8700万円)。
元々は大平山山頂のNHKテレビ塔建設のために計画されたものだったが、昭和30年代のレジャーブームもあり観光用として開設されることとなったという。
開設年には県内外から10万人近くの観光客が訪れるなど、瀬戸内海に浮かぶ島々を始め、天気の良い日は遠く四国最西端の佐田岬や大分県の国東半島まで望むことができる一大景勝地であった。



しかしながら年々利用者数の減少が進んでいき、1998年(平成10年)にはその存続の是非を協議すべく「大平山索道事業検討協議会」が設置された。その際は当面の継続という結論が出たものの、2007年度(平成19年度)末までで累積赤字は20億4500万円と、防府市財政の大きな負担となっていた。

山頂駅



山腹駅

2004年(平成16年)10月、山頂公園の全面リニューアルが行われ、一時的に利用客の回復が見られたものの、2014年(平成26年)7月に実施された点検でメインロープに規定以上の摩耗が見られたため、同年8月から一時運航休止となった。
残念ながらそれ以降は稼働することなく、翌2015年(平成27年)2月18日に廃止が決定された。しかしながら「あさぎり」と「ゆうばえ」と名付けられた2台のロープウェイは山頂駅に固定されて展望台として第二の人生を歩むこととなる。
なお、廃止前年の利用客数は22,608人であった。

ゆうばえ

あさぎり


標高631.3m。防府市で最も高い大平山は約10万株と言われるツツジの名所、また夜景スポットとしても知られる。
半世紀以上にわたり稼働を続けた2台のロープウェイは、今後も並んで穏やかな余生を過ごすことだろう。





大平山山頂公園(旧大平山ロープウェイ)
Address : 山口県防府市牟礼
駐車場:有(無料)
参考:


2022年8月訪問


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